【解説】ケーブルラックの選定から支持間隔、接地まで!

ケーブルラック

電気配線工事によく使われるケーブルラック。選定ポイントや支持間隔、接地についても解説します。ケーブルラック選びや施工の参考にしていただければ幸いです。

1. ケーブルラックとは?

ケーブルラックとは、たくさんのケーブルを配線する際に使用する部材のことです。はしご状またはトレー状でケーブルを支えます。駅のホームや公共施設など、大量に電気が必要とされる場所によく使われているので、見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。ケーブルラックを使用することで、たくさんのケーブルを効率よく簡単に配線できます。

2. ケーブルラックの選定

ケーブルラックにはいくつか種類があります。本記事で説明する選定ポイントはつぎのとおりです。

  • ●形状
  • ●材質・仕上げ・適合場所
  • ●幅

形状

①はしご形

「ケーブルラック」といったら、ほとんどがはしご形。そのため幅広い種類の製品が販売されています。地面にたいして水平にも垂直にも施工できます。下から見上げるとケーブルが見えてしまうため、見栄えがよくないというデメリットもあります。インシュロックや麻ひもを使って桁部分にケーブルを固定します。

ケーブルラックはしご形

②トレー形

はしご形と違ってケーブルラックの底部分がすべて板になっているため、下から見上げてもケーブルが見えず、見栄えがよいです。ただ、はしご形に比べて製品の種類があまり豊富ではないというデメリットがあります。トレーの一部にあけられている小穴を使ってケーブルを固定します。

ケーブルラックトレー形

材質・仕上げ・適合場所

ケーブルラックは施工する場所によって材質や仕上げ(塗装仕様)を選定する必要があります。仕様によってZM、ZAなどの記号がつけられています。

①一般屋内にはZM(はしご形)またはZT(トレー形)

②湿気・水気の多い屋内 または 一般屋外にはZ35またはZAまたはAL(はしご形)

ケーブルラック材料および仕上げの記号

【出典元】

国土交通省「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)令和4年版」P 153

https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001472440.pdf

ケーブルラックの使用場所の選定

【出典元】

農林水産省「電気設備計画設計技術指針(高低圧編)(令和元年9月)」P 4-114

https://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/kyotu_siyosyo/kikaisisin/kikaisisin.html

ケーブルの本数や仕上がり外径等によってケーブルラック幅を選定します。将来ケーブルが増える可能性があることや、ケーブルを真っ直ぐに敷設できないこと等から、予備スペースも考慮します。

ケーブルラック幅を選定する公式はつぎの2種類あります。

①強電ケーブルラックの場合(1段積)

W≧1.2[Σ(D+10)+60]mm

②弱電ケーブルの場合(2段積)

W≧0.6{Σ(D+10)+120}mm

W・・・ラック幅
D・・・各ケーブルの仕上がり外径(mm)

基本的には1段積が望ましいですが、弱電用の場合はケーブルの段積みや束ねが許容される場合があります。

ケーブルラック寸法(幅)選定の条件

【出典元】

農林水産省「電気設備計画設計技術指針(高低圧編)(令和元年9月)」P 4-115

https://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/kyotu_siyosyo/kikaisisin/kikaisisin.html

3. ケーブルラックの支持間隔

ケーブルラックの支持間隔は、国土交通省の指針により次のように定められています。支持間隔が広すぎると、たわみが大きくなり事故の原因になるので注意が必要です。

(2)

ケーブルラックの水平支持間隔は、鋼製では2m以下、その他については1.5m以下とする。また、直線部と直線部以外との接続部では、接続部に近い箇所及びケーブルラック端部に近い箇所で支持する。

(3)

ケーブルラックの垂直支持間隔は、3m以下とする。ただし、配線室等の部分は、6m以下の範囲で各階支持とすることができる。

【出典元】

国道交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和4年版」P75

https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001472438.pdf

4. ケーブルラックの接地

感電防止や火災防止のために不可欠な接地工事。ケーブルラックにも接地工事が必要です。国土交通省の指針によるとケーブルラックについて、使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が必要とされています。

【参考資料】

国道交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和4年版」P82~「第13節 接地」

https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001472438.pdf

D種接地工事

洗濯機や業務用施設の照明、冷蔵庫などに必要とされる接地工事。接地抵抗値は10Ω以下。ただし、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下。接地線の太さの計算式は、断面積[A]=0.052×定格電流。(内線規程 資料1-3-6より)

C種接地工事

400Vで使用している電動機やファン類、太陽光発電設備、電気自動車充電器などに対して施されることが多い工事。接地抵抗値は10Ω以下。ただし、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下。接地線の太さの計算式は、断面積[A]=0.052×定格電流。(内線規程 資料1-3-6より)

5. 地面を這うケーブルの収納はどうする?

ケーブルラックは天井や側面の壁などに施工されます。地面に這わせても支障がないケーブルを仮設配線する場合は、天井に仮設するよりも地面に這わせたほうが施工時間を節約できることがあります。

しかし、ケーブルを地面に這わせると歩行者や車により踏みつけられる心配があります。では地面を這うケーブルの収納はどうすればよいのでしょうか?そんなときはケーブルプロテクターが活躍します。

写真のケーブルプロテクターは、地面に置いて、蓋をあけてケーブルを溝に収納し、蓋を閉めるタイプです。1本が90cmもしくは1mの長さのため、必要な長さに応じて複数本を連結します。ケーブルを通す溝の数は、2本のタイプや3本のタイプ、5本のタイプなどいくつかの種類があり、幅広い現場や用途に対応します。

強化型ケーブルプロテクターどこでもケーブルワイド収納タイプ・プロPW-3PRO

車イスや台車などの通行にはバリアフリー・タイプを使うとスムーズです。

「バリアフリー・スロープ(外付け)」の製品ページはこちら

強化型ケーブルプロテクターどこでもケーブルワイド収納タイプ・プロ(バリアフリー)PW-3PRO-BF

より多くのケーブルをまとめて収納することもできます。スロープ部分を分離して、センター部分を必要なだけ連結することでたくさんのケーブルをまとめて保護するタイプを使用します。

「コネクトⅡ」の製品ページはこちら
強化型ケーブルプロテクターどこでもケーブルコネクトⅡ

ケーブルプロテクターについてはこちらの記事でも解説しています。

「キャブタイヤケーブルの保護方法」
「強化型ケーブルプロテクターどこでもケーブルはこんなときに使える!」

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