キャブタイヤケーブル[参考]

キャブタイヤケーブルとは

キャブタイヤケーブルとは通電したまま移動できる電力供給ケーブルです。絶縁体で保護された導体(主に銅)が、シースと呼ばれる保護素材で守られています。このシース部分には大きく分けてゴム系とビニル系が存在します。また、近年需要の高まっているエコキャブタイヤケーブルではゴム系と樹脂系などが用いられていますが、いずれも環境に配慮されたものです。

キャブタイヤケーブルの用途によって、大電力の供給が可能な「動力用」と機械類の信号線として用いる「制御用」の2つに分けられます。

多くの場合は電力供給のための動力用です。例えば、住居ではあらかじめ壁や天井内部にVVFケーブルなどが屋内配線として用いられています。また、工場ではコンベアや仮設発電機のような機械にVCTなどの各種キャブタイヤケーブルが動力のために用いられています。

動力用キャブタイヤケーブルでは熱の蓄積を防ぎ、ケーブルの重量を軽くするなどの点から多芯タイプではなくシングルタイプを用いるのが一般的です。そして、日本国内におけるキャブタイヤケーブルではそのほとんどがJIS規格で製作されており、サイズの単位は断面積を表すSQ(スケア)を表示しています。

なお、「ケーブル」と「コード」は混同されることがよくありますが、実は大きな違いがあります。「ケーブル」は、導体に絶縁性の被覆を施し、その上からさらに塩化ビニル、耐熱性ポリエチレン、天然ゴムなどの外装で保護してあるものです。それに対し「コード」は、導体に絶縁性の被覆を施しただけのものです。外装で保護してあることから「コード」よりも「ケーブル」のほうが耐久性は高いです。

キャブタイヤケーブルの仕様

各種キャブタイヤケーブルの仕様はメーカーのカタログで調べます。具体的にはケーブルの「材質」「仕上外径」「許容電流」「許容曲げ半径」などの情報です。例えば、許容電流を超えてしまうと発生した熱でケーブルが溶けるだけではなく火災につながりかねません。また、許容曲げ半径を超えてしまうと寿命が低下するだけではなく、被覆部分に亀裂が入って漏電することもあります。キャブタイヤケーブルの使用方法・使用環境の条件を明確にしておくことが必要です。

キャブタイヤケーブルの取扱いメーカーについて

主な取り扱いメーカー(敬称略)は、冨士電線株式会社・株式会社三ツ星・住友電工産業電線株式会社などが挙げられます。各メーカーのシースは灰色であっても内部の芯線についての色は異なる場合があるため、使用する際には事前に確認すると良いでしょう。キャブタイヤケーブルを選定するには、使用用途や場所・環境、さらに電流や電源の種類などを考慮に入れなければなりません。

ゴム系キャブタイヤケーブルについて

ゴム系キャブタイヤケーブルにはグレードが存在しており、それぞれ「1種」「2種」「3種」「4種」とありますが、現在では2種が最も多く使われています。

ゴム系キャプタイヤケーブル断面図

「1種」・・・天然ゴムのみを素材としたキャブタイヤケーブル。

「2種」・・・シースがEPゴム、絶縁体がクロロプレンゴムのキャブタイヤケーブル。

「3種」・・・損傷に強い補強層がありシースと絶縁体を厚くしたキャブタイヤケーブル。

「4種」・・・芯線間にクレードルコアがありシースを最も厚くしたキャブタイヤケーブル。

導体外径や導体公称断面積について

導体外径や導体公称断面積は規格化されており、それぞれ以下の通りです。

「導体外径」・・・芯線の導体部分の外径を表しています。

(例)φ0.4/φ0.5/φ0.9/φ1.1/φ1.5/φ1.6/φ1.8/φ2/φ2.5/φ3.1など。(φmm)

「導体公称断面積」・・・導体断面積を表しており、これに比例して許容電流が上がります。

(例)0.3sq/0.5sq/0.75sq/1.25sq/2sq/3.5sq/5.5sq/8sq/14sq/22sqなど。

キャブタイヤケーブルの種類

ゴム系キャブタイヤケーブル各種

【RNCT】

一般用とされる動力用キャブタイヤケーブルです。絶縁体が天然ゴムであり、耐候性や耐摩耗性に優れるため、農業用作業機械や工場での移動ケーブルなどに使用されていますが、近年では合成ゴムのPNCTに移行しつつある種類です。

【PNCT】

一般用とされる動力用キャブタイヤケーブルです。合成ゴム系のものであり、耐候性や耐油性に非常に優れるため、クレーンやエレベーターなどに使用されます。このケーブルはクラス・種別ごとに2PNCT(2種)・3PNCT(3種)・4PNCT(4種)と分かれており先頭の数字が大きいほど損傷に強くなります。よって工場の移動用ケーブルのような摩耗の激しい現場には3PNCTがよく使われています。例えば、電工ドラムでは柔軟性のあるVCTが使われたものがあります。一方、防爆型ドラムではクラス・種別の高い3PNCTが使われており、不測の災害を予防できるものになっています。なお、PNCTもしくは1PNCTで表記されるケーブルはなく、また4PNCTは受注生産である場合があります。その他、使用する芯数や許容電流などを計算して条件を満たすケーブルを選定しましょう。

【CT】

一般用とされる動力用キャブタイヤケーブルです。耐候性や耐油性にやや劣り、難燃性もありませんが、天然ゴム系のものは柔軟性と耐摩耗性などを持つため、農業用作業機械や工場での移動ケーブル、移動用機器の電源回路やコンベアなどに使用されます。

ビニル系キャブタイヤケーブル各種

【VCT】

絶縁体とシースの両方にビニルが用いられており、柔軟性や耐水性・難燃性などにも優れるため「交流600V以下」「直流750V以下」の移動用電気機器の電源回路やFA関係工場内の配線などに使用されます。

【VCTF】

絶縁体とシースの両方にポリエチレンが用いられており「交流300V以下」の移動用電気機器の電源回路などに使用されます。VCTと比較すると被覆が薄く、使用電圧が低いなどの特徴が挙げられます。

エコ系キャブタイヤケーブル

エコ系キャブタイヤケーブルにはハロゲンや鉛を含有しないため、燃やした場合でも塩素などといった有毒ガスが発生せず、埋設による鉛が流出することがない利点があります。また近年では、リサイクルが可能なので大変需要が高まっています。一般的には、EMケーブルまたはエコケーブルなどと呼ばれます。ケーブルの太さや電気特性に差はなく、従来通りのキャブタイヤケーブルから変更が可能です。

ちなみに、燃焼時に発生するダイオキシンは空気中のわずかな塩素でも発生することが判明されました。つまり、燃焼時のダイオキシン発生は塩ビ樹脂によるものではなく、燃焼する条件に依存していたようです。

キャブタイヤケーブルの仕上外径

よく使用されるキャブタイヤケーブルの標準的な仕上外径(mm)をまとめると以下の表になります。ただし、各メーカー間によって多少の差は生じるため、表の数値はあくまでも参考値として用いてください。

2PNCTの仕上外径表 2CTの仕上外径表 VCTの仕上外径表

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